サツマイナモリ  里山のどこに行っても咲いています。

宮崎の山の中が荒涼としている冬の頃でも、サツマイナモリだけは咲いている期間があります。

道端にも杉林の中にも。

2、30センチの草丈です。横に這っています。

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ラッパ状の小さな花です。

f:id:tonji44:20190320142346j:plainありふれていてよく見ていませんでしたが、接写して拡大すると、とてもきれいな花でした。

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ピンクと白がきれいです。
ピンクは雌しべの柱頭です。

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サツマイナモリは薩摩稲森です。

三重県の稲森山で発見されたという稲森草というのが別にあって、それに似ていて南九州を中心にあるのがサツマイナモリのようです。

だけど関東南部などでも見られるそうです。

数が多すぎて見向きもされない…そんな花の典型です。

 

 

小魚がいっぱいいる所を見つけたコサギ

大きな川の川口にはテトラポットで波よけがしてあります。

その川口に行くといつも一羽のコサギがいます。

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そこを住処にしているようです。
なぜかと思って近づいてみました。
分かりました。小魚がいっぱいいるみたい。

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次々と小魚を獲ります

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パックン。

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またパックン。

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お腹いっぱいになったら休憩。

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いいところを見つけたコサギ.。このテトラポットの隙間がお家です。

 

 

ヤマネコノメソウ 山猫の目?山の猫の目?

登山道を登って行くと崖下にネコノメソウが咲いていました。

わりと日陰のところです。

草丈20センチ位です。

葉と茎が柔らかそう。

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ネコノメソウにはいろんな種類があります。

今回出会ったのは、ヤマネコノメソウです。山猫の目草。

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黄色の花。

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下の写真。

花の横に長い緑色の筒、これは果実です。

果実が割れて中に黒い種子。

猫が目をつぶっているのが緑の果実。

目をあけたら黒い瞳。だから山の猫の目かな。

まだ3月というのに種子ができているのは早すぎ。

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この緑のお椀の中にあるたくさんの種子。どのようにして外にばらまかれるのでしょうか。

雨が降って水があふれて種子も流れ出る?

風で茎が揺れて転がり出る?

また謎が増えました。(笑)

 

 

 

ハマエンドウ  海浜植物

砂浜を散歩しました。
ハマエンドウが咲いていました。

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蔓が砂の上を這っています。日本中の海岸で見られるそうです。

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今からまだまだ繁茂しそうです。とても元気そう。

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花がとてもきれいです。エンドウの花の形。

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葉もエンドウそっくり。

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ハマエンドウの向こうでは釣りをする人。

 

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海と空と砂浜と。

光がすっかり春になりました。



 




セキレイたち3種

今時、普通に見られるセキレイ3種です。

まずセグロセキレイ。

黒いですねえ。顔に少しばかりの白。

背中が真っ黒。だからセグロセキレイ。

宮崎では留鳥です。1年中見られます。f:id:tonji44:20190310143121j:plain

オキナワの友達が宮崎に鳥見に来たことがありました。

そしたら、セグロセキレイが見たいと言いました。

沖縄に普通いないのだそうです。不思議。

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次はハクセキレイ。留鳥ですが、秋になるとたくさん渡ってきて、田んぼで一番見られる鳥です。

ハクセキレイは白(はく)だから白いはず。

背中は・・・黒い。

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それならセグロセキレイは「背黒」でなく、「顔黒」セキレイにして、ハクセキレイをカオジロセキレイにしたらよかったのに。

だけどハクセキレイのメスや若鳥は背が黒くない。

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これはちょっと変わったハクセキレイ。

頬の線が薄い。何だろう。

ホオジロハクセキレイというのが時々やってきますがそれではありません。

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ハクセキレイはいろいろあって面白いです。

セグロセキレイにはいろいろありません。

 

3番目はキセキレイ。留鳥。

セグロセキレイもハクセキレイも田んぼや畑でよく見ますが、キセキレイは田んぼ畑ではほとんど見ません。やはり水辺が似合います。

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水の紋がきれいです。

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以上この冬見たセキレイ3種でした。

 

野生のツクシスミレ

山の登る途中の土手にツクシスミレ(筑紫菫)が咲いていました。

この場所を見つけたのはもう何年も前です。

最初見つけた時は夏で、葉と花殻でした。

たぶんそうだろうと思って、次の春に花が咲くのが待ち遠しかった記憶があります。

数は最初からしても、増えもせず減りもしない感じです。

宮崎県ではほかの場所では見たことがありません。

 

小さくてかわいいスミレです。

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ツクシスミレはなんといっても葉が変わっています。スプーン型です。

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 匍匐茎(ほふくけい)といって、根元から茎が伸びて着地し、また新しいツクシスミレが生まれます。赤ちゃんみたいな。

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岩にもくっついていました。

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左はタチツボスミレです。比べると花が小さいです。

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まだしばらくは咲き続けることでしょう。

 

カンムリカイツブリ  頭に冠が出来始め

広い入り江、カンムリカイツブリがいていました。

随分夏羽に近づいて、カンムリが出来始めていました。

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カンムリの出来ていない状態は・・・。11月の写真です。

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冬羽  写真倉庫から

随分変わりました。

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カンムリはもうすこし大きく派手になっていくのですが、宮崎で見られるのはこの付近まで。そうです、もうそろそろ北に帰る季節なのです。

しきりに潜ります。伸びあがって、頭から潜ります。

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魚をくわえて上がってこないか待ちましたが、そのような場面はありませんでした。

 

ハマニガナ  砂に花咲く砂の花

砂がきれいです。

海岸の砂は汚れていません。波が砂を洗い、そのきれいな砂を強い風で砂浜中にばらまきます。

だから砂浜の砂は、踏まれた足跡も次に日にはきれいに何もなかったようになります。

 

そんな砂浜にとてもよく似合う植物。それはハマニガナです。

葉や茎で砂を必要以上に覆うことがありません。

まるで砂の植物です。

下の写真のまん丸い葉と黄色い花がハマニガナ。

 

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茎は砂の中にあって、葉と花だけをちょっとだけを砂の上に出しています。

砂と同化しています。自己主張の少ない植物。

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葉が砂地にペタッとくっついています。

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私はこの花をハマイチョウというのが本当かと思っていました。

そのように教わったからです。今回一緒に花を見た友人はハマニガナと言います。この人間違っているのかなと思いましたが、帰って調べたらハマニガナが正式名称で、ハマイチョウは別名でした。

前から、宮崎のハマイチョウは、イチョウの葉に似ていないと思っていましたが、葉にはいろいろあるようです。

 

こんなに小さいのですよ。

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虫がやってきました。こんな砂浜に何の虫だろう。ミツバチにしては小さすぎるし。

花にとっては貴重な虫。

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夏のころまでは砂浜に行けばこの花が見られます。






 

 

ホウロクシギ シギ・チの春の渡りの始まり

天気は良くて風もない穏やかな日と思って浜辺に行きましたら、波がとても高い。

その波の上を飛ぶ大きな鳥がいました。

沖には行かず岸辺の波の上を行ったり来たり

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シギ類やチドリ類の春の渡りにしては早すぎるかなと思いましたが。

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嘴が長くて下に反っています。

大きさからするとホウロクシギかダイシャクシギです。

翼の下面が白っぽくないのでホウロクシギかな。

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浜辺に下りたり飛び立ったり、遊んでいるように見えます。

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下りました。9羽。

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波が高いですねえ。。

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何を考えているのだろう。

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まだ渡って行く先のシベリアは氷におおわれているのではないかな。

だからここにしばらく滞在して時間調整かも知れません。

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また飛び立つ準備。

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ぽかぽか陽気の砂浜。

波を見たり、鳥を見たり、砂浜を見たり。歩いたり。

昼になったので、コンビニサンドイッチと冷えたコーヒーでお昼です。

水平線を大きな船が南下していきます。

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穏やかな午後。次第に波もおさまってきました。



自転車のブレーキの音で鳴くジョウビタキ

最も身近な冬鳥を書いていませんでした。

ジョウビタキです。スズメより少しだけ小さい鳥です。

 

秋になったある日、キヒッ、キヒッ、キヒッという自転車がブレーキを掛けながら、坂道を下りてくるような音が聞こえたら、それはジョウビタキが家の近くに来たという印です。

まとまって来るのではなくて、神様が天空から豆をばらまいたように、距離間隔をあけてパラパラと、全国いたる所に舞い降りてきたような感じです。

そして人懐っこくて、わりと人を恐れません。

だから見る機会が最も高い冬鳥で、今の時季もいます。

 

高岡の畑脇にいたジョウビタキのオスです。
ジョウビタキの別名は「紋付鳥(もんつきどり」です。
「紋の付いた袴を着ている」ということですが腰の白がなんとも紋に見えます。

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そして頭が銀色。胸がレンガ色。

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黒い中に黒い目。

遠目には目が見えません。

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こちらはメスです。

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これは上とは別のメスです。少し淡い色。幼鳥っぽい。

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4月になったらいなくなると思います。

モンゴルとかチベットなどに帰って子育てをします。

うち付近に来るのはメスです。

多分同じ鳥が毎年やって来るのだと思いますが、よく道を間違わないものだと感心します。

 

変わったスミレ? 不明スミレ

エイザンスミレの咲く山を歩いていたら、その中に白っぽい花のスミレがありました。

付近のエイザンスミレと明らかに花の色が違います。

花を見てヒゴスミレかなと思いました。

しかし、しゃがんで目を近づけると葉が変。

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こんな葉のスミレを見たのは初めて。

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一体このスミレは何?

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距が大きい。f:id:tonji44:20190309191540j:plain

もしかしてヒトツバエゾスミレ?

それともエイザンスミレと何かの交雑種?

わからなーい!

エイザンスミレかそれとも?

台地のはずれの山肌にスミレが沢山咲いています。

花は少しピンクが入ってとてもきれいです。

写真ではそのピンクがあまり出ませんけど。

 

普通のスミレと全然違う所。

それは葉です。

切れ込みが多い。

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宮崎ではあまり見かけないスミレです。

エイザンスミレかヒゴスミレ?

図鑑で調べると、エイザンスミレは葉の基部が3葉に分かれて、ヒゴは5葉。

葉全体を広げると、エイザンは3角形、ヒゴは5角形。

この葉の基部、5枚のようだけど一番茎側は基部からではなく2,3枚目の途中から出てきているようにあります。そして葉の全体を広げた時の形はきれいな5角形ではないと思います。そしてヒゴは葉の裂片がとても細いはず。

そういうことから葉はエイザンかな?

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エイザンとヒゴのもう一つの区別点は、花の縁だそうです。

エイザンは波打っていて、ヒゴは波打っていないそうです。

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え、ほとんど波打ってない?ヒゴ?

難しいけど少しは波打っているのでしょうか.

 

ということで難しい。

私の見た感じではエイザンです。私が知っているヒゴの花は、白くて丸っこい感じ。

そして葉が細い。

だから私の判定はエイザン。最後は感覚(笑)

しかし待てよ、もしかするとエイザンとヒゴの中間型と言われるナンザンスミレ?

ナンザンスミレは長崎県対馬特産。それが宮崎に。それは大変。

 

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人間が決めた花の名前。このスミレにとっては「私は私」

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ここで咲いているだけ。ただそれだけ。

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ここの山に咲いているのを見つけたのは2010年ですから随分前です。

毎年咲きます。見に行くのが楽しみです。

今回現地から、スマホで写真撮って、京都に住む友人に「エイザンスミレですよ」とラインしましたら、「今比叡山が見えるところにいます。エイザンスミレのエイザンは比叡山の叡山で、ここで見つかったかららしいですよ。今朝は比叡山にまだ冠雪がありました」と返信が来ました。なるほど比叡山のエイザンだったのですね。

 

 

アマナはスプリング・エフェメラル

スプリング・エフェメラル Spring Ephemeral とは、直訳すると「春のはかない命」でしょうか。そのように呼ばれている植物の一つがアマナです。

台地の小道を歩いていると道路脇にアマナが咲いていました。

今時の花です。

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この赤い筋がなんとも和の感じがします。

とても小さい花です。このくらい。

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もうすこし大きい花もありました。それでも高さ15センチ位。

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春先に花を着けた後は葉だけになり、夏には他の草に埋もれてしまい、地下の球根の形で春を待つのだそうです。

夕方立ち寄ったら花は閉じていました。

春のはかない花。スプリング・エフェメラル 。

 

マムシグサとムサシアブミが並んで咲いていました。

今の季節、里山の林縁に行くと必ず出会うもの、それはマムシグサ。

まだ他の草が目立たない中で、タケノコのようににょきにょきと出てきています。

目立ちます。

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葉と花が出ているのもありました。

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花(仏炎苞)が変わった形で面白い。

こんなかわいい花に何でマムシグサ?

茎(偽茎)がマムシの体の柄に似ているからだそうです。

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そういわれればそっくりですが、「もっといい名前を付けてほしかった」・・・とマムシグサが言っています。

ほら花は白い筋が入ってきれいでしょ。

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宮崎県にはこの花が黒いのもあります。

ヒトヨシテンナンショウ(変種)

面白い。

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ヒトヨシテンナンショウ   霧島山麓・写真倉庫から

池の小道を進んでいくと、マムシグサではないものがありました。

並んで咲いていました。

ムサシアブミです。こちらはいい名前。

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左の背が低くて花より葉が上にあるのがムサシアブミ。右はマムシグサ。

 

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ムサシアブミです。

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アブミいうのは、鐙のことで、馬に乗るとき足を置くところのことです。鞍からぶら下がっています。

ムサシアブミの花を上下ひっくり返すと足が載せられるかな。

秋になると赤い実をつけます。小鳥が食べます。

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このムサシアブミ、いつの間にかうちの庭にも出てきました。小鳥が庭で糞をしたな。

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マムシグサとムサシアブミを見た溜池。向こうにまだカモが浮いています。

 

水神様を助けたヒレンジャクのお話

大きい川のほとりに広い広い田んぼがありました。

そこは宮崎県児湯郡高鍋町の山手の方です。

その田んぼを守っているのは水神様です。

水神様は田んぼの脇にポツンとおられます。

水神様は、洪水が起こらないように、天気が良すぎて田んぼが干上がらないようにと、いつもお百姓さんの願いを聞いておられました。

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水神様は秋に稲の刈り取りが終わるとほっとします。

お百姓さんが、田んぼで取れた籾(もみ)を沢山持って帰ることができたからです。

そして秋が終わるころ、田んぼには何もなくなってしまいます。

水神様を守っているもの、それは大きな木です。水神様は大きな木の根元におられます。大きな木はエノキという木です。

エノキは夏の間は、石の水神様が涼しいように葉っぱをいっぱい茂らせます。

ところが秋になるとエノキの葉っぱは少しずつ落ちてしまって、冬にはとうとう裸になります。落葉樹だからです。

ですから、水神様は裸になったエノキの根っこにおられて、冬になると冷たい雨は降るし、霜は降るしでとても困っておられました。

それをいつも見ているエノキは、自分が葉を落としたせいなので、とてもやりきれない気持ちでいっぱいでした。

ある冬の日、その裸のエノキの枝にきれいな小鳥が止まりました。しっぽの先が赤色の鳥です。

ヒレンジャクという鳥です。ちょっと眼付きの悪い威張りん坊です。

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ヒレンジャクはエノキが悲しそうにしているので尋ねました。

「エノキ君何か心配事でもあるの」

するとエノキは答えました。

「秋になって葉が落ちてしまったんだ。僕は生まれつきだから我慢するけど、根っこにおられる水神様が寒そうで。雨は冷たいし、霜は降りるしで凍えそうなんだよ」

ヒレンジャクは考えました。

「一つだけいい方法があるよ。試してみようか」

それを聞いてもエノキは、「鳥に冬の間も落ちない葉をつけることは無理だよな」と思いましたが、それは口に出さずに

「どんな方法だい」

と聞いてみました。

「いい方法があるよ。自分の葉でなくても、ほかの木の葉の力を借りるのさ」 

ヒレンジャクは自信ありげに飛び立ちました。

そしてしばらくして帰って来ました。

「こうするのさ」と言ってしたことはなんとびっくり。

その大きな木の幹に糞をし始めました。つながった不思議な糞。

エノキはびっくりしました。

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ヒレンジャクは言いました。

「来年になったら、この木の窪みに落ちた糞から芽が出て、次第に葉っぱが茂るよ。糞の中に木の種が入っているからね」

エノキは「なんだか信じられないなあ」と思いましたが、

「来年を待ってみるよ」

と言いました。

ヒレンジャクは飛び去りました。

次の年の春、本当にその幹の窪んだ所から小さな木の芽が出てきました。

エノキは喜びました。そして水神様に報告しました。

「ヒレンジャク君のいった通り、僕の幹の窪みから別の木の芽が出てきました」

その芽はエノキの幹から栄養を貰い、次第に大きくなっていきました。そして冬の間、その木の葉っぱと間違うくらい葉がたくさん茂りました。

ほら見てください。あちこちに。

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エノキは大喜び。そして水神様も大喜び。

その木はヤドリギという木で、ほかの木の幹にくっついて大きくなる木だったのです。

他の木に「宿る木」です。

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そして、毎年そのヤドリギには小さな花が咲いて、真冬に白い実と赤い実をつけます。

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ヒレンジャクは自分の作戦が大成功で大喜び。

「どうだ、俺の言ったとおりになっただろう」

と威張って枝に止まっています。

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そして毎年ヒレンジャクたちがその実を食べにやってきます。

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そいうことで、冬エノキの葉がなくなっても、ヤドリギでまるでエノキの葉っぱが残っているかのように茂って、おかげで水神様も雨除けと霜よけになって大助かり。

それからというもの水神様とエノキは、冬になってヤドリギの実がなるころ、ヒレンジャクがやって来るのが待ち遠しくて仕方がありません。

おーしーまい。