大雨が降り続く中で、写真の整理をしていたらイヌワシが出てきました。
宮崎県に、私が知っている期間だけでも11年間住んでいました。
今ではあまり知る人もいなくなりました。
忘れられてしまうのはイヌワシがかわいそうな気がしますので、ここに書いて一人でも多くの人の記憶にとどめてもらえれば、イヌワシも喜ぶかなと思って載せることにしました。
イヌワシは宮崎県に1999年から2010年までの11年間、ある場所に周年生息していました。
そのある場所とは、綾北川上流の掃部岳周辺です。
掃部岳周辺は5つの市町村が山手で交わるところです。
綾町、国富町、西都市、西米良村、小林市です。ちょうどその境界あたりを11年間飛び回っていました。道路の通っていない空白地帯です。見つけたのは、クマタカを見に行っていた時です。
1999年2月14日のことでした。
私達夫婦はそのころも山を歩きまわっていました。
綾北川の支流の曽見川の林道を車でゆっくり遡っていました。
車を止められるような広いところがあったのでそこに車を止めて外に出て、バタンとドアを閉めたら、その川から2羽の大きな鳥が舞い上がってきました。「今のは何?」妻と顔を見合わせました。
そしてもう1羽。双眼鏡で見てもトビではありません。クマタカでもありません。ハチクマでもありません。何だろうとキツネにつままれたような気持でした。
そしてもうすこし上流に行ったらそこでも1羽が舞っていました。先ほどの3羽の中の1羽かなと思いました。それをビデオに収めました。帰ってからビデオを見ながらいろいろ調べたらイヌワシでした。
宮崎県にイヌワシがいるなんてびっくりです。
それがイヌワシの発見の日のことです。それから時々イヌワシを見に行きました。2羽同時に見たこともありましたが、3羽ということはありませんでした。それでも見に行けば必ず数回見ることができました。
1日中山にいても、掃部岳の方の空を舞っているのを見ることが多く、めったに近くに来ませんでした。
当時は大きな望遠レンズとかは持っているはずもありません。
300ミリのフイルムカメラのレンズでしたが、豆粒ほどにしか写りません。
2002年の5月5日、また夫婦でそこに行っていた時、わりと近くの木に止まりました。
それがこの写真です。
この写真をどのようにして撮ったかというと、当時流行り出した「押し付けデジスコ」の方法で写したものです。
遠くの鳥を見るスコープというのがあります。三脚の上に細長い単眼鏡を取り付けて、片目で遠くの鳥を見るスコープです。
あれの接眼部分に、当時の新鋭機のニコン・クールピクス800というデジタルカメラを押し付けて写すのです。
手で押し付けますからなかなかうまくいきません。それでもうまくいけば、今までのフイルムカメラの300ミリからすると格段に大きな写真が撮れました。
たくさん撮った中で、たまたまピントがある程度合ったのがここに上げた写真です。
イヌワシはゴールデンイーグルです。頭が金色に輝いています。なんとなくそんな感じが出ています。
なんといってもクマタカなどからすると大きいです。
森の王者です。
その時は、しばらくしたら遠くの方に飛んでしまいました。下の写真。
イヌワシの飛び方の特徴は、翼がYの字に反りかえることです。クマタカやハチクマやトビとは違います。そして翼が長い。
下の写真。当時の押し付けデシスコの元画像はこんな感じです。周りにスコープの枠が写っています。これをスコープ側のリングを回したり、カメラ側のリングを回したりしながら撮りますから、なかなかうまくいきませんでした。その後専用のリングが売りだされて、固定が楽になりました。今はもっと進化したものを使っている人たちがたくさんおられます。デジスコ健在です。
イヌワシは11年間、年に何回も確認しました。仲間のTさんもよく家族で通って確認してくださいました。
最後に私たちが確認したのは2010年3月22日です。
下がその日の写真です。もう押し付けデシスコではなく、デジタル一眼カメラと500ミリレンズです。
その後も毎年何回も通いましたが、見ることが出来なくなりました。
もうそこにはいません。どうしたのでしょう。
最初に思いがけなく出会ったように、またどこかで巡り合いそうな気がします。