漆黒の闇の中を、手にライトを持って一人で歩いておりました。
そこは川沿い山道。何が出てくるかわからない怖い道。
車を止めて随分歩いた頃、歩き疲れたので立ち止まって、どれくらいの闇かなと思ってライトを消してみました。漆黒の闇は、立っていることそれだけがが難しいことが分かりました。ふらふらするのです。川の音のする谷の方に吸い込まれそうな気分になるのです。それでしゃがみ込んでじっとしていました。
その闇を見まわしていると崖の方で何か光るものが。ビックリしました。
小さな細い光です。光っては消えまたしばらく間をおいて光っては消え。
これは蛍の光の間隔だと思いました。しかし蛍の光よりずっと弱いのです。飛びませんが光が動きます。
光る虫。今まで見たことがありませんでした。
暫くしてから、ライトで照らしてみました。葉の上に小さな虫がいました。
これが光っていたのです。
ライトで照らしたまま写真を撮ってみました。
小さい小さい虫です。尺取りみたいに尻尾を起点に動いています。
帰ってから調べてみるとマドボタルの幼虫のようです。
マドボタルにはオオマドボタルとクロマドボタルがいます。
オオマドボタルは比較的よく見られているようですが、クロマドボタルは小さくて九州ではあまり観察例がないようです。
大きさからクロマドボタルのようにあります。それでどちらかを知りたくなりました。そのためには捕まえてきて調べないとわかりません。
ということで次の次の夜また一人で闇夜の探検に行ってきました。
光る虫のいるところ付近に辿り着きました。それからが大変でした。
捕まえるのが難しいのです。大きめのタッパーを持って行って、それに入れてくる予定でした。
光っている虫にパッとライトを当てて、葉の上にいるのを確認しタッパーを葉の下に置いてふるい落とそうという作戦です。ところが虫がタッパーに入ったかと思って覗くと入っていないのです。ふるい落とす振動で、小さいものだからほかの所に飛んでしまうようです。
かといって、虫をつまんで採るにはあまりにも細くて、足場も悪いのでつかみつぶしてしまいそうなのでできません。
失敗するとどこかに落ちた虫はしばらくは光りませんから、別な場所に移動して別な虫を探します。
そのようにして何回も試みた末やっと一匹捕まえました。その頃は午後11時近くになっていました。
そして家で写真を撮ることができました。
それが下の写真です。持って帰った葉の上に載せています。
こんなに小さいのです。1センチ強。
写真を撮るのも大変でした。動きが早いからです。持って帰った緑の葉や枯葉の上に載せるのですが、あっという間に葉裏に隠れてしまうのです。動きの速いこと。
こんなに小さな物を撮る専用のカメラではありませんのでこれが精いっぱいです。
ひっくり返り。
光るのは尻尾の先のようですがよくわかりません。
色々特徴などを調べてみました。私の結論はクロマドボタルかなと思いました。しかしオオマドボタルとの違いがよく分かりませんでした。
面白いものに出会えました。
夜にも、私の知らない別世界があることが分かりました。
そして夜の山奥の自然の中には、幽霊も化け物も魑魅魍魎もいないことが分かりました。意外と爽やかでした。
家で写真を撮り終えたら近くの池まで持っていって、池の端の小径の藪にありがとうと言って逃がしました。