「夏は来ぬ」という童謡があります。
卯(う)の花の、匂う垣根に
時鳥(ほととぎす)、早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす、夏は来ぬ
この5番の歌詞は
五月(さつき)やみ、蛍飛びかい
水鶏(くいな)鳴き、卯の花咲きて
早苗(さなえ)植えわたす、夏は来ぬ
(佐々木信綱作詞・小山作之助作曲)
です。この水鶏(くいな)がクイナです。
所がややこしいのは、古くはヒクイナのことをクイナと呼んでいたようです。ですから古い歌や文に出てくるクイナは殆どヒクイナのことのようです。
上の童謡の「夏は来ぬ」のクイナもヒクイナというわけです。
昔の人は、もしかしたら同じものと思っていたのかもしれません。同じくらいの大きさで、同じようなところに住んでいるからです。オスとメスと思っていたのかな。
今回も小さな池に両方一緒にいる所を見ました。
しかしよく見れば色が違うし、そして大きな違いは鳴き声です。
ヒクイナの鳴き声が独特です。
コッ・コッ・コッ・コッ・コッ・コココココ
コッ・コッ・コッ・コッ・コッ・コココココ
最後のココココは尻すぼみに小さくなって消えます。
このコッ・コッ・コッ・コッ・コッが戸を叩くコンコンコンコン
に聞こえるということでクイナが戸を叩くという言葉が生まれたようです。
文学的表現です。
五月菖蒲ふく頃早苗とる頃水鶏の叩くなど心ぼそからぬかは 兼好法師 の徒然草
水鶏啼き高野は真夜も杉匂ふ 神尾久美子
雨となりて背戸の水鶏の鳴き止みぬ 寺田寅彦
それではまず、ヒクイナの写真です。
緋色がきれいです。だから緋水鶏です。
次は同じ池にいたクイナです。クイナの鳴き声は文学にするほどきれいではありません。ギュッ、ギュッというような声です。
ヒクイナは宮崎では1年中見ます。繁殖しているようです。
それに比べてクイナはなかなか見ません。多分、冬鳥として渡ってきて、繁殖期になると北に帰っていくのだろうと思います。